
「5年後に会おうぜ」と言うやつに限って、5年後には連絡先すら残っていない。
別にK-POPの話って訳じゃなくて、私の人生の話である。勤務先でも、昔の近所付き合いでも、「絶対また飲もうな!」と固い握手を交わした相手の顔を、私はもう半分も思い出せないのだ。人間の「また会おう」なんて、だいたいその場の照明みたいなもので、店を出たら消えてしまう。
だからこそ、I.O.I のあの約束を、私はずっと話半分で聞いていた。
解散のとき、メンバーは泣きながら「5年後にまた会おう」と言った。はいはい、と思った。どうせお別れの場の照明だろうと。ところがである、彼女たちはその照明を10年つけっぱなしにして、本当に帰ってきたのだ。しかも新曲を引っさげて。手土産が豪華すぎないかい?
「電波、電波、怪電波」が口癖のこのブログで、よりにもよってMnetの申し子みたいなグループに頭を下げる日が来るとは思わなかった。でも今日は素直に言わせてほしい。おかえり、I.O.I。
そして猫に嫌われても、ママに叱られても、腰を上げながったこの私がようやく重い腰をあげるのだった。
そもそも I.O.I(아이오아이)とは
10年も経っているのだから、知らない人もいるだろう。そんな人のために。
I.O.I は2016年5月4日、『Dream Girls』でデビューした11人組。Mnetのサバイバル番組『PRODUCE 101』シーズン1で、46事務所の練習生101人の中から視聴者投票で選ばれた11人で結成された。
ポイントは「期間限定」だったこと。最初から「だいたい1年活動したら解散して各自の事務所に帰る」という、最初から賞味期限シールを貼られて売られていたグループなのである。実際、約8か月走って2017年1月末に解散した。
それなのに残したものは大きい。全曲が今の自分に刺さるかと言えば正直そうでもなくて、私がリピートしてきたのは結局『Very Very Very』くらいだ。でも音楽の好みを超えて、この11人が残していったものは途方もない。そして何より、ここから巣立った11人がその後のK-POPを背負っていくことになる(これは後述のメンバー紹介で)。
I.O.I再結成までのざっくり年表
細かい話の前に、まずは流れを。
- 2016.05.04 … 『Dream Girls』でデビュー(11人)
- 2017.01 … 約8か月の活動を経て解散
- 2021.05 … 5周年配信『I.5.I』で一時再会
- 2025.12.25 … メンバー自らカムバックを発表
- 2026.02.23 … 9人での再結成を正式発表(ミナ・キョルギョンは不参加)
- 2026.03.09 … 10周年の公式SNS開設(ソミの誕生日)
- 2026.04.20頃 … アルバム『I.O.I : LOOP』を告知
- 2026.05.04 … 先行曲『웃으며 안녕』公開(不参加2人を含む全11人の声)
- 2026.05.19 … ミニアルバム『I.O.I : LOOP』リリース/タイトル曲『Suddenly』
- 2026.05.29 … 『Suddenly』がMelon TOP 100で1位
- 2026.05.29〜31 / 06.06 / 06.20〜21 … ソウル/バンコク/香港でアジアツアー
帰ってくるまでの怒涛の半年
ここからの流れが、まあ早かった。
- 2025年12月25日 … メンバー自ら2026年5月のカムバックを発表。クリスマスにこのプレゼントは反則だ。
- 2026年2月23日 … 正式発表。ただしカン・ミナとキョルギョンの2人は先約の俳優業で不参加、9人での再結成に。
- 2026年3月9日 … 10周年の公式SNS開設。ちなみにこの日はソミの誕生日。粋なことをするじゃないか。
- 2026年4月20日前後 … アルバム名が『I.O.I : LOOP』、発売は5月19日と発表。
9人か、と最初はちょっと寂しかった。でも「全員揃わないならやらない」ではなく「揃う人でちゃんとやる」を選んだのが、今の彼女たちらしくて逆に好きだ。みんなそれぞれ自分の人生を全力で走っているのだから。
泣かせにきた先行曲『웃으며 안녕』
で、ここが一番語りたいところ。
アルバムに先駆けて、2026年5月4日——そう、デビュー記念日ぴったりに先行曲『웃으며 안녕(笑って、さようなら)』が公開された。
これがただの先行曲じゃない。当時のメンバーの声を収めた「アーカイブ曲」という扱いで、今回不参加のミナとキョルギョンを含む、11人全員の歌声が入っている。
プロデュースはチョン・ジニョン。I.O.I に『桜が散る頃』や、『PRODUCE 101』の名バラード『같은 곳에서(同じ場所で)』を書いた人。つまりこのグループの涙腺の位置を熟知した人選なわけである。
9人で再結成しながら、最初に出す曲で11人全員をちゃんと拾う。「会えない2人も、ずっと I.O.I だよ」というメッセージにしか聞こえない。これを記念日に出してくるあたり、運営、分かってる。完全に泣かせにきている。案の定、私は泣いた。く~っと。
ちなみに、運営会社はYMCエンターテイメント(後にドリームティエンターテイメントに合併)から、Wanna One、IZ*ONE、Kep1erを手掛けたスィングエンターテイメントに変更になっている。実は現在の代表はYMCの元代表。
本編『I.O.I : LOOP』
そして5月19日18時、3枚目のミニアルバム『I.O.I : LOOP』が全6曲でリリース。タイトル曲は『갑자기(Suddenly)』。
この曲、なんと作詞にソミが参加している(VVNとの共作)。デビュー時はグループ最年少のセンターだった子が、今は自分で詞を書く側に回っている。この一点だけで10年の重みにクラッとくる。
正直に言うと、タイトル曲よりも『IOI (Where My Girls At)』のほうが好みだ。とはいえ、カムバックだから感動、という文脈の重みよ。
そして『LOOP』というタイトル。「continuity(連続性)」「再びの繋がり」「物語がもう一度始まる」——散り散りになった11人が、また原点に戻ってくる。K-POPあるあるの「巡り巡って結局ここに帰る」を、まるごとタイトルにしてしまった。うまい。
で、結果は? ——10年目でも、ちゃんと強い
「懐かしさで売れただけだろう?」と斜に構えた人(私だ)に、数字が答えを出した。
- リリース1時間でMelon TOP 100に初登場
- 5月27日、YouTube急上昇1位
- そして5月29日朝、Melon TOP 100で1位
この1位、I.O.I にとってはチャート改編後はじめてらしい。しかも2020年代にこのチャートで1位を獲った3世代ガールズグループは、BLACKPINKに次いで2組目だという。懐古じゃない、現役だ、これは。
9年待った「名前」と、アジアツアー
ここで古参が静かにこぶしを握った話をひとつ。
結成から9年越しで、I.O.I についに公式ファンダム名がついた。その名も「Angdungie(앙둥이)」。意味はざっくり「ずっとこのグループの曲を聴いて、記憶を生かし続けて、残ってくれたファン」。……要するに待っていた我々のことだぜ!
締めは待望のアジアツアー『2026 I.O.I Concert Tour : LOOP』。
- 5月29〜31日 … ソウル(蚕室室内体育館)3DAYS
- 6月6日 … バンコク
- 6月20〜21日 … 香港 2DAYS
この記事を書いている今まさに、彼女たちはバンコクのステージに立っているはず。香港はこれから。10年前に解散コンサートで泣いていた子たちが、今アジアを回っている。これを奇跡と呼ばずに何と呼ぶ。
ふたたび一つの円に。
8か月で散った11人が、10年かけて帰ってきた。『I.O.I : LOOP』カムバックと、メンバーそれぞれの今を、一枚でたどる完全ガイド。
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あの子たちは、今 ——11人名鑑
長くなったが、これを書かないと終われない。8か月で散った11粒の種が、10年でどんな木になったか。順位順でいきます。
チョン・ソミ(전소미) ・1位/センター
The Black Label所属のソロ。『Dumb Dumb』『Fast Forward』。今作『Suddenly』では作詞も。あの末っ子がねえ。
キム・セジョン(김세정) ・2位
歌って演じる二刀流。『社内お見合い』は社会現象に。元gugudan。歌も芝居も一線級って反則だ。
チェ・ユジョン(최유정) ・3位
元Weki Meki(2024年に解散)。2022年にソロデビューも。芝居も自然でいい。
キム・チョンハ(청하) ・4位
言わずと知れたソロの頂点。「I.O.I 出身」の枕詞すらもう要らない大物。
キム・ソヘ(김소혜) ・5位
早くから演技の道へ。派手さより着実、現場を重ねるタイプの女優。映画『ユンヒへ』で新人賞も。
チュ・ギョルギョン(주결경) ・6位
“中国の奇跡”と呼ばれた、外国人メンバー最高位。元PRISTIN。今は拠点を中国に移し、歌手・女優として中韓で活躍中。今回はやはり多忙で不参加。
チョン・チェヨン(정채연) ・7位
元DIA、今やすっかり主演女優。『恋慕』『金のスプーン』『Family by Choice』。
キム・ドヨン(김도연) ・8位
元Weki Meki。スタイル抜群でモデル・女優としても存在感。
カン・ミナ(강미나) ・9位
元gugudan、女優。今回は新ドラマで不参加。サボりじゃない、むしろ働きすぎ。
イム・ナヨン(임나영) ・リーダー(10位)
元PRISTIN。今は女優。リーダーが地に足つけて歩いているのが、なんだか嬉しい。
ユ・ヨンジョン(유연정) ・11位
最終回でいちばん最後に呼ばれた11番目のメンバー。WJSN(宇宙少女)として活動を続けてきた。
——ほら、とんでもないだろう。ソロの覇者がいて、二刀流がいて、看板女優が何人もいる。8か月のプロジェクトが撒いた種が、こんな森になった。
おわりに
賞味期限つきで生まれたグループが、10年後に自分の足で集まって、新曲を出して、チャート1位を獲って、ファンに名前まで贈った。
『PRODUCE 101』というシステムには、正直思うところもある(あの投票の件は、また別の記事でちゃんと書く)。それでも、あの番組から生まれた11人がそれぞれの場所で立派に育って、また一つの円(LOOP)に戻ってきた——この事実だけは、四の五の言わずに祝いたい。
ひとまず、イジェン・アンニョン。
おまけ



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